長い一日の仕事を終え、帰りのバスに乗り込むとお腹が鳴り始め、今日は仕事が忙しかったために昼食をとっていなかったことを思い出しました。
バスの窓から外を見ると、見慣れた光景が目に飛び込んできました――小さなワゴンショップで食事をする人たちが、一杯のご飯とお皿いっぱいの柔らかそうな牛肉、そして濃厚で香りの高いソースを大きなボウルで食べているのです。
バスを降りて、それは一体何だろうと店に向かって歩いていきます。
おばさんが、1杯のご飯、濃い目のソースに包まれた柔らかい肉の皿、そして濃い目のスープの入ったボウルを渡してくれ、好きに補充してくださいね、と付け加えました。また、彼女はこの料理をパレスと呼ぶと、そう言いました。
そして、柔らかい牛肉とスプーン一杯のご飯を一口食べるごとに、ストレスで緊張した筋肉がほぐれ、強い雨が降っているにもかかわらず、スープを飲むにつれて体が温まっていくのを感じるのです。
さて、誰もがおいしいと褒めるこの料理、一体どんなものなのか、どうやって調理するのか、興味がわいてきたのではないでしょうか。
パレス(Pares)って何?
パレスとは、別名「ビーフ・パレス(Beef Pares)」といって、道端や屋台で提供されるフィリピンのポピュラーな料理で、座ってじっくりと味わいながら食べるのが一般的です。この料理は味だけではなく、値段も安く量も多いということでよく知られています。
スパイスと一緒に柔らかく煮込んだ角切りの牛肩バラ肉がこのレシピの主役。香りや風味だけでも魅力的な一品です。
この料理を食べたことのある人―特に他の国から来た人の多くは、この料理を再現したい、フィリピンで経験した一口をもう一度味わいたいと思うのものですが、この料理は一見とても手が込んで見えるので、今回は簡単にレシピを紹介することにします。
ビーフ・パレスの作り方
ビーフパレスは一見シンプルな料理にも見えますが、3つのパートに分かれ、準備に3時間程度、あるいはそれ以上の時間を要し、その大半は待ち時間に費やされます。
※ユーリ追記:動画で見たい方はタガログ語版ですが、英語の字幕も出せるこちらをどうぞ
だし汁スープ
料理の主役(牛肉)の前に、まず牛肉を完璧に引き立てるスープから始めましょう。
作り方は2種類あって、1つはスーパーマーケットの牛の出汁を買ってきて温め直す方法、もう1つは一から作る方法です。
一から作るには、まず牛骨の出汁を取ることから始めます。牛肉のどの部分を使ってもいいのですが、首の骨は骨と肉の割合が一番いいので、それを使用します。
牛肉を茹でる前にオーブンで焼くという方法もあります。天板に牛骨を並べ、オーブンで20分ほど焼きあげるのがいちばん良い仕上がりになります。この工程は他の工程と同じでお好みなのですが、スープの風味をより一層引き立てることができます。
- 鍋に6カップの水を入れ沸騰させます。沸騰したら牛骨とミルポワ(ニンジン、セロリ、タマネギを合わせたもの)を投入します。
- お酢を大さじ3杯入れると、コラーゲンを分解してブイヨンをよりゼラチン化させるとともに、風味もよくなるので、ちょうどよい分量でしょう。塩、こしょうはお好みで加えてください。
- 骨は弱火で少なくとも3時間煮込むのが最短ですが、時間に余裕がある場合や最高の仕上がりを求める場合は、もっと長い時間煮込んでください。
ご飯
ガーリックライスは一般的に道端などで売られているのですが、ご家庭ではお好みに応じてプレーンライスを作ってもよいでしょう。
フィリピン人はよく「sinangag na kanin(シナンガグ・ナ・カニン)」と呼びますが、これは前の食事で残った冷たいご飯で、特に「トゥトン」と呼ばれるご飯の茶色い焦げのような部分を食べます。
- まず、にんにくを小さなフライパンに入れて弱火できつね色になるまで軽く焼きます。その一部を付け合せに使ってもOKです。
- それから、ご飯と塩を加えて味を調えれば完成です!かき混ぜて適度な固さにするだけで十分です。
牛肉
- まず、鍋か圧力鍋に油を入れ、火にかけて熱することから始めます。タマネギ、ニンニク、ショウガをソテーしておきます。
- 次に、ニンニクとタマネギが黄金色になったところで、肉を加え、こんがりとした焼き色がつくまで焼き上げます。
- きつね色になったところで醤油と水を注ぎ、全体に味を行き渡らせるように絡めます。
- ここでビーフキューブ調味料とスターアニス、そして塩・コショウを加えることができます。そのあと圧力鍋を密閉し、高圧で15分間加熱します。
- さらに15分経ってからブラウンシュガーを加え、塩と挽きたての黒胡椒で味を整えます。
- さらに8~10分あるいはソースにとろみがつき、少し煮詰まるまで煮続けます。
ひと工夫
この料理だけではなく、どんな料理でもその魅力を高めるために、ゲストへ視覚的にアピールできるような方法で提供するべきです。
加熱した濃厚なスープを器に注ぎ、その上に長ねぎ・カラマンシーをトッピング。ガーリックチャーハンを用意すると同時にライスタワーを作り、その上にあらかじめ残しておいたフライドガーリックを乗せましょう。
牛肉とソースの一部を受け皿に移し、フライドガーリックと長ネギを乗せると、色の組み合わせが美しく、より美味しく仕上がります。牛肉を主役にした盛り付けです。
以上で終了です!フィリピンの家庭料理の味をどうぞ召し上がれ。
肉とそのタレをスプーンでご飯と一緒に食べると――ay kasarap! (わぁおいしい!)
最後に
フィリピン人にとって、パレスは懐を痛めることなくお腹を満たしてくれる安定の食べ物です。フィリピンの至るところで売られています。
一度でも味わえば、雨の日に家族の安らぎを求めるように、その味はいつまでも心に残ることでしょう。
この料理は毎年雨季だけでなく、一年を通じてお腹を空かせたフィリピン人たちに安らぎを与えてくれているのです。