フィリピンの経済は、2022年に46年ぶりの高成長率を記録しました。その中で、フィリピンを代表するコングロマリットとなったサンミゲル社は、どのような業績を上げたのでしょうか?
このブログ記事では、サンミゲル社の2022年の決算速報をもとに、各事業部門の業績や動向、直面した課題や機会などを詳しく解説します。
サンミゲル社の業績と事業部門の動向
フィリピンのサンミゲル社は、食品・飲料、電力、石油、インフラなどの多角化事業を展開する巨大企業です。2022年には、前年比60%増の1兆5,066億ペソの収入を達成しました。
しかし、コストの大幅増加などにより、純利益は44%減の268億ペソと大幅に減少しました。
食品・飲料事業の業績
サンミゲル社の食品・飲料事業は、2022年に二桁の増収増益を達成しました。
この事業は、サンミゲルフーズ&ビバレッジ社として、食品部門、パッケージ部門、ビール事業、洋酒事業の4つの部門に分かれています。
食品部門の業績
食品部門は、16%増の1,753億ペソの売上高、15%増の133億ペソの営業利益、21%増の92億ペソの純利益を記録しました。この成長は、家庭用や業務用の食品製品の需要が高まったことや、新製品の開発や販売促進活動が効果を発揮したことによるものです。
特に、牛乳やチーズなどの乳製品や、鶏肉や豚肉などの肉製品が好調でした。
パッケージ部門の業績
パッケージ部門は、10%増の370億ペソの売上高、42%増の16億4,800万ペソの営業利益を記録しました。この部門は、サンミゲル山村パッケージング社として、食品・飲料やその他の産業向けに各種パッケージ材料や容器を提供しています。
2022年は、国内外での需要が回復し、特にプラスチックや金属製の容器が伸びました。
ビール事業の業績
ビール事業は、サンミゲル・ブリュワリー社として運営されており、日本のキリンホールディングス社が約48%出資しています。この事業は、10%増の2億2,450万ケースの総販売数量、17%増の1,362億ペソの売上高、10%増の295億ペソの営業利益、6%増の218億ペソの純利益を達成しました。
この事業は、新型コロナ感染拡大による外出自粛やレストランなどでの飲食制限などにより大きな影響を受けましたが、家庭での消費やオンライン販売などにより回復しました。また、プレミアムブランドや新商品なども好評でした。
洋酒事業の業績
洋酒事業は、ヒネブラ サンミゲル社として運営されており、7%増の4,460万ケースの総販売数量、11%増の473億ペソの売上高、13%増の60億ペソの営業利益、9%増の45億ペソの純利益を記録しました。この事業は、過去最高となる純利益を達成しました。この事業は、国内市場で高いシェアを維持するとともに、海外市場へも積極的に進出しています。特に中国や東南アジアで人気が高まっています。
電力事業の業績
サンミゲル社の電力事業は、2022年に大幅な増収を達成しましたが、利益は大きく減少しました。
この事業は、SMCグローバル パワー ホールディングス社として、火力発電や水力発電などの発電事業や、蓄電システムなどの新規事業を展開しています。
収入と利益の変動
電力事業の収入は、66%増の2,214億ペソとなりました。この増収は、販売電力量が2万7,402ギガワットと堅調であったことや、販売電力料金が上昇したこと、蓄電システム事業が寄与したことなどによるものです。
特に、蓄電システム事業は、フィリピン初の大規模な蓄電池エネルギー貯蔵システム(BESS)を稼働させたことで注目されました。
燃料や運輸コストの影響
しかし、燃料や運輸などのコストが急上昇したことで、電力事業の営業利益は22%減の289億ペソ、純利益は80%減の31億ペソと大幅に減少しました。また、新型コロナ感染拡大による需要低迷や供給不安定なども影響しました。
サンミゲル社は、今後も電力事業の拡大に取り組み、再生可能エネルギーの開発や環境保護にも貢献するとしています。
石油製品事業の業績
サンミゲル社の石油製品事業は、2022年に売上高と利益をともに増加させました。
この事業は、ペトロン社として、フィリピン最大の石油元売り企業として活動しています。ペトロン社は、石油精製や販売、輸出などの事業を行っており、フィリピン国内の約40%の市場シェアを持っています。
総販売量と売上高の増加
石油製品事業の総販売量は、37%増の1億1,281万バレルと大幅に増加しました。この増加は、新型コロナ感染減少や経済再開に伴う石油需要の回復や、海外市場での販売拡大などによるものです。特に、航空燃料やディーゼルなどの販売が伸びました。
利益率の低下
石油製品事業の売上高は、96%増の8,576億ペソとなりました。この増収は、販売量の増加に加えて、原油価格や為替レートなどの変動による販売価格の上昇が影響しました。しかし、コストも大幅に増加したことで、営業利益は12%増の192億ペソ、純利益は9%増の67億ペソとなり、利益率は低下しました。
ペトロン社は、今後も石油製品事業の競争力を高めるために、コスト削減や生産性向上などの取り組みを続けるとしています。
インフラ事業の業績
サンミゲル社のインフラ事業は、2022年に売上高と利益をともに大幅に増加させました。この事業は、SMCインフラストラクチャー社として、高速道路や空港などのインフラ開発や運営を行っています。
SMCインフラストラクチャー社は、フィリピン政府との公私パートナーシップ(PPP)契約に基づいて、多くのインフラプロジェクトに参画しています。
純収入と営業利益の増加
インフラ事業の純収入は、47%増の290億ペソとなりました。この増収は、新型コロナ感染拡大による制限措置の緩和や経済活動の回復に伴い、高速道路の通行量が25%増となったことが主な要因です。
特に、南北通勤鉄道延伸事業やマニラ国際空港拡張事業などの新規プロジェクトが進捗したことも寄与しました。
インフラ事業の今後の展望
インフラ事業の営業利益は、110%増の142億ペソとなりました。この増益は、売上高の増加に加えて、コスト管理や効率化などの取り組みが効果を発揮したことが影響しました。
SMCインフラストラクチャー社は、今後もインフラ事業の拡大に取り組み、フィリピンの経済発展や社会福祉に貢献するとしています。
2022年のサンミゲル社の業績まとめ
このように、2022年に収入を大幅に増加させたものの、純利益は大きく減少したサンミゲル社。各事業部門の業績や動向は、新型コロナ感染拡大や経済再開などの影響を受けましたが、それぞれに課題や機会がありました。
この企業の業績は、フィリピン経済や投資家にとっても重要な意味を持ちます。サンミゲル社は、フィリピンの主要な雇用創出者や税金納入者であり、多くの産業や消費者にサービスを提供しています。
また、インフラや再生可能エネルギーなどの新規事業にも積極的に参入しており、フィリピンの持続可能な発展に貢献しています。
参考:https://www.rappler.com/business/san-miguel-corporation-earnings-report-january-december-2022/